カメラのノウハウ

「情景写真術」から学ぶ見た人の感情を揺さぶる写真を撮る方法とは?

どうも、クマパパです!

写真歴15年と無駄に長いクマパパと申します。

前回は初めて本格的に商品撮影をしてみたい人に向けた本の記事を書きました。

プロから学ぶ「初めての商品撮影編」 どうもクマパパです。 副業として「せどり」をする方が増えていますよね。 私も一時期せどりを始めようと思ったこともあ...

次は誰もが一度は見たことある、アニメのワンシーンや映画のシーンを写しだすテクニックを紹介した

写真家の田中達也さんの本から学びたいと思います!

著者の田中氏は元々、写真業界とは別の医療ソーシャルワーカー(社会福祉)の仕事をされていました。そこから自然写真家として独立された経歴の方なんです!

花、風景、星空と撮影活動をしており中でもオーロラの作品は国内外から高い評価を得ております。

田中氏曰く、イメージやテーマの無い写真は風景の切り取りで記録写真となってしまうことが多いと指摘しています。

今回の記事では風景写真を上手く撮れるように必要なテクニック、テーマ別に必要な設定などを本書からご紹介したいと思います!

少しでも上達したいと思う方必読です!

情景写真とは何だろうか

ジブリ作品 ハウルの動く城が出てきそうなイメージ

印象に残る写真とは?何処か懐かしさを感じたり見たことがあったりと思うのは実際にあなたが見たことある映画や旅行先、漫画やゲーム、アニメでのワンシーンであることが根本的にあるとしています。

本書ではどこか見たことのある写真「情景」を撮る方法を教えてくれているんですね。

そもそも「情景」とは何だっけ?

と思う方もいると思います。

単なる景色ではなく人の心を揺さぶるような光景や忘れられない程の強い印象に残った場面を「情景」としています。

「海岸の高台で見た夕焼けの景色が忘れられない」

「となりのトトロで見たあの田園風景が田舎を感じさせてくれた」

「ジュラシックパークの映画で見た森林の不気味さが忘れられない」

そうです、誰もが一度は感じた記憶に強く残った場面ということですね。

撮影場所に行くとたまに「あっ、この風景は○○○で見た景色に似ている!」となることありませんか?

私も何も考えないで撮影スポットを探すのは大変なので事前に調べて頭に浮かぶ情景を撮りに行けるよう意識を変えられました。

情景写真を撮るにはワークフローが必須!

ワークフローと聞くと面倒だと感じてしまう人も多いかと…

でも考えてみてください。

カメラをぶらさけて考えも無しに良い写真を撮りたいと思って歩いても撮れる確率は低いですよね?

どうせならしっかりとプランニングして撮影に臨む方が確率は高く、写真の作品としての完成度も段違いに上がるんですね。

行ったことないからとにかく行ってみよう!とカメラ持って出掛けたことがありますが思った撮影スポットが無く、不発になった経験もあるのでワークフローを決めてからの撮影は後悔が少なくなりました。

では始めてみましょう!

STEP1

「何をどう撮るか」の引き出しを沢山持とう

撮影する時にアプローチの仕方を考えたことありますか?

CM、映画、アニメや漫画など一度見た光景からでしか人はイメージが湧かないと筆者は言っているんですね。

普段からイメージ出来る様に様々な映画、CMや視覚的なコンテンツに触れてみるのが重要なんですね。

アニメ何かでは実写とは違いアニメ特有の描写があるので印象に残る確率が高いと感じています。筆者も書いてありましたがジブリは印象に残り易いですね。

STEP2

ロケハンができればベスト!

よし!狩りに行くぞ!

それはモンハンですぞ。

ロケハンとは「ロケーション・ハンティング」の意味です。ハンティングするのは一緒でしたね。

テレビ業界で良く使われていますが写真撮影でも重要なんですね。

ですが時間の無い中、「2度も足を運ぶのはちょっとね」ってなりますよね。

なので著書いわくライブカメラやインターネットで事前に下調べはしてくださいって言っています。

定点カメラやGoogleストリートビューでも雰囲気は掴めるので実践してみましょう。

私はこれを怠ったが為に片道2時間の場所に行って撮影スポットに辿り着けず諦めたことがあります。

「おっ!ここは良さそうだな」と目星を付けるだけで失敗は減りました。

STEP3

現場に到着したらまず光線状態を見る

晴れか曇りか、太陽の位置により順光か斜光か逆光かをチェックします。

順光は絵の様な写りになり、斜光は立体感のある写り、逆光はシルエットなど変わった印象の写りになります。

斜光
逆光

ここは逆光じゃなくてしっかり撮りたかったなんて経験あるんじゃないでしょうか?

この経験から森の中での撮影は逆光の少ない10時から15時前には撮影を終えるようにしたことで変に白飛びした写真、逆光で黒潰れした写真になることが減りました。

当たり前ですが太陽の位置って凄く重要なんです!

STEP4

自分が移動することで被写体へのアプローチを変える

勿論ですが風景は動きません。

必要なのは狙った構図に当てはまるスポットを歩きながら探すしかありません。

同じ場所でも目線の高低差によっては印象は全然違います。

なので気になるスポットでは高さを変えて撮影してみてみましょう!

目線の高さで撮影すると「代わり映えしないな」って思うことが多くないでしょうか?

あえてアングラで撮影してみると景色が一変しますので実践してみてください!

目線のからの倒木も悪くはないのですが
倒木の苔にフォーカスして見ると印象が凄く変わる

STEP5

アプローチと同時進行でカメラの設定を変える

著書では絞り優先AEを使用したうえでシャッタースピードにも注意するよう指摘しています。

ポイント

シャッタースピードを「1/焦点距離」以下にならないようにする。

手振れの可能性を防ぐ為ですね。

次に絞り込みすぎによるブレや回折現象に注意

ポイント

絞り値は基本的にF8〜F11に設定するのが好ましい。

絞り値は絞るほど被写界深度が浅くなるので風景を撮る際には絞るほうが綺麗に撮れると勘違いされます。

シャッタースピードが遅くなったり画像の歪みやレンズ内で光が反射して画質が低下する原因にもなるので注意ですね。

STEP5と同じ場所の写真

表現によってはF値を2にしてピントを光の当たっている部分だけにフォーカスしてみると幻想的な表現ができます。

STEP6

フレーミングとレンズを決めて構図を追い込んでいく

フレーミングとは撮りたい被写体にカメラを向けて大まかな構図を決めた後、被写体までの距離や写したい画角にあったレンズを選定する。

そして最終的な構図を決めていくのが手順になります。

次に一連のプロセスで筆者が1番に注意はすべき点をあげています。

それは「撮り急ぎ」です。

グループでの撮影会や家族の旅行では周りとの行動を合わせなくていけないのでどうしても焦ってしまいますよね。

構図確認では重要なのはテーマの印象を薄くしてしまう余計な部分が写っていないかを確認することなんですね。

筆者はここを焦ってしまうのは作品自体に影響があり、本人も不満が残りかねないと考えています。

「少し待ってほしい」

「ごめん、撮影後に追いかけるから先に歩いても良いよ」

何て一声掛けて作品をしっかりと撮ることで人に情緒を感じる風景を撮ることが可能になるんですね。

家族と移動中に青空を背景にランドマークを撮ったが手前の信号機に気付かなかった失敗作

STEP7

RAW現像で写真をイメージ通りに仕上げていく

撮影時にはRAWデータでの保存を推奨している参考書は多いですよね。

著者も勿論推奨しているんですが優秀なRAWデータも万能ではないことを指摘しているんです。

それはISO感度とシャッタースピード、絞り値は撮影後は変更できないぞ!ってことです。

ホワイトバランスは変更可能ですし露出もある程度変更できます。

でも露出オーバー気味になればノイズが目立ってしまったり不自然な色になったりするので極端な調整は作品の質に悪影響があるのて注意が必要です。

データ容量に余裕とリスク回避用としてSDカードを2枚保持するのが個人的には安心です。

なんせ1枚当たり20MB以上あるので…

全部で25ある情景から6つを選びました!

湖の情景

著者は東山魁夷氏の作品がお好きなんでしょうね!作例として本書に掲載されています。

東山ブルーと呼ばれる作中の青の風景は日本人の心象に残る色です。

正直、日本画には疎かったので本書で初めて知ることになった画家でした。

しかし、紹介したいのも分かるほど東山魁夷氏の作品における青い色彩は引き込まれてしまう印象を受けました。

色温をブルーに寄せることで作品の雰囲気を演出

本書では霧フィルターで曖昧さを演出することを勧めており、そうすることで更に東山魁夷氏の作品に似せることが出来そうですね。

作品のポイント

被写体のコントラストを下げる設定を事前に行い、フィルターでぼかし、かすみを残す補正をすることで実際に霧が無くとも演出は可能です。

大地の情景

大地と聞くと広大な平原かサハラ砂漠の様な果てしなく続く地平線のイメージが湧きます。

スターウォーズでも広大な大地でレースを繰り広げたシーンが印象的でした。

今にもポッドレーサーが走り抜けてきそうな雰囲気

また大地の情景では色がはっきり出る順光であることが条件です。

夕陽に照らされた大地では全体がオレンジ色に
日が高い日中で順光であれば青々とした情景に

時間帯によって表現の仕方が変わるので撮影する場合はテーマを決めて時間帯も考慮しないと思い描いた情景を撮ることができないんですね…

ポイント

太陽を入れた構図では絞り値を上げると絵の様な太陽にすることもできます。

滝の情景

滝は神秘的なイメージを感じさせますね

神秘的なイメージを演出するには露出をアンダーに設定して、滝をメインの構図にすることで作品を作り上げます。

他の物が写り込むと神秘性が損なわれる可能性があるんですね。

手前の枝葉があると写真としては悪くないですが神秘性が演出できません。
教科書と同じく露出をアンダーで設定し滝をメインに添えるだけで何処か神秘性を感じさせます

ポイント

滝の勢いのある写真を撮るのに適したシャッタースピードは

・1/1000秒以上が好ましいとされています!

・滝をメインして露出アンダーに設定する!

季節の情景

どこかで観た景色、懐かしく感じる情景は季節毎に様々な情景を作ることができそうですね。

春の記憶

春の桜はソフトフィルターを使用した淡い雰囲気にしたフワッとした印象にすることで記憶に残る桜の情景を演出しました。

ポイント

ソフトフィルターと敢えての曇り空で雰囲気を演出

夏の記憶

夏といえば海!ですね。

そこに青空と入道雲を背景に海岸に迫り出した青々とした山は夏を想起させるには最高のロケーションでした。

本書では入道雲はコントラストを下げて夏の日差しの明暗を表現できるとのことで試してみました。

ポイント

太陽の位置は自分の後頭部の位置付近からでコントラストを調整します。

白はコントラストを下げることで明暗差をつけることができるので試してみてください。

秋の記憶

秋と言えば紅葉ですが全体を写すだけでは情景にはなりませんね

本書では紅葉は「孤独感や寂しさを感じる紅葉こそが情景である」と筆者は伝えています。

このままではただの綺麗な紅葉の記録写真になってしまう。

情景を出すには露出アンダーで黒を引き締めるのが重要とあるので実践してみましょう。

切り抜きでポイントを絞り露出アンダーに調整

赤い葉が引き締まり、寂しさを感じさせる情景になりました。

紅葉の種類にも得意不向きもあり、赤色はアンダーで黄色は露出オーバーが良いようですね。

冬の記憶

冬の景色はモノトーンになりやすい

明暗差を出す必要があるので画像の様に右手の木を主体に車の轍を写すことで距離感や雪の特徴を演出できています。

薄暗い雑木林の山道を朝日が差し込むことで木の影や木漏れ日により幻想的な印象にすることができました。

ポイント

モノトーンになりやすい冬の景色では明暗差に注目して構図を追い込むことで冬ならではの作品が作れそうですね。

蛍の情景

点の様に写るはヒメボタル

蛍と言えば宮崎駿監督の「火垂るの墓」のワンシーンを思い浮かべました。

「なんで蛍はすぐ死んでまうん?」

節子のこの質問に寂しさや無情さを感じた人も多いと思います。

ではそんな蛍ですが日本には46種類の蛍がいますが主に3種類の蛍をご存知でしょうか?

  1. ヒメボタル 
  2. ゲンジボタル
  3. ヘイケボタル

①ヒメボタルは陸生で里山や竹林や杉林に住み、発光は深夜であることが特徴です。

発光頻度はパッパッといった瞬間光になります。

ヒメボタルと聞くと「竹取物語」今で言う「かぐや姫」の物語で竹林で光る竹から見つかったかぐや姫からきているのでしょうか。

残念ながら名前の由来は見つかりませんでした。

②.③のゲンジボタル、ヘイケボタルは小川や河原など水辺に生息しており幼虫期は水中で過ごして成長になる前に陸に上がります。

発光は日没後からで2〜4秒の間、発光をしながら飛翔します。

また成虫の蛍が見られる時期は5月から6月になります。

参考写真

ゲンジボタルやヘイケボタルは発光の長さから線の様な写真になります。

ポイント

発光する時間帯はヒメボタル、ゲンジボタルとヘイケボタルで違うので撮影方法が異なります。

深夜に発光するヒメボタルは周囲の景色を写す為にはISO感度を1000から2500に設定し、絞り値はF2で撮影に臨むのが良いとされています。

また日没後に発光するゲンジボタル、ヘイケボタルではISO感度は800から3200でF値は2から4の間で撮影するのが望ましいとされています。

正直、同じ水生のゲンジボタルとヘイケボタルを見分けるのは難しいので試し撮りを繰り返してベストな設定で臨みましょう。

そして撮影した画像を比較明合成することで蛍が群生している様な幻想的な写真にすることができるわけです。

※比較明合成とは異なる明るさの部分だけを抽出して画像を重ねていくレタッチ方法でカメラ内で可能な機種もあり、フリーソフトでも可能になっています。

星の情景

こんな星空撮りたいです!

一眼カメラを持っている人なら一度は考えたのではないでしょうか?

場所によりますが設定次第で誰でも簡単に撮影できてしまいますので本書からご紹介します。

誰でも簡単に撮るにはカメラの設定が重要です。

肉眼でこれだけ星が見えていれば撮れるだろうと安易な設定のまま長時間露光で撮影しても真っ暗な写真が写るだけなんです。

私がISO感度200、F値8で三脚、レリーズを使用してB撮影した結果になります。

ではどの様な設定であれば撮れるのか?

  • F値         2.8
  • ISO感度 1600
  • シャッタースピード 30秒

OR

  • F値         3.5
  • ISO感度 3200
  • シャッタースピード 30秒

いずれもレンズの開放値であり2.8が開放値であれば1600のISO感度。

3.5が開放値であれば3200のISO感度と想定しています。

つまりISO感度を上げることが必須なのですね…。

感度を上げながら調整

残念ながらピンボケ写真でした。

星撮影ではマニュアル露出にマニュアルでピントを合わせることが重要になります。

ちょっとした知識で撮りたい写真が撮れるようになりましたね。

本書を読んで

今まで適当に考えていた写真撮影を根底から覆された内容でした。

分からなければ撮れなかった景色もカメラの設定や撮影場所を調べてテーマを決めれば思った情景が撮れるようになります。

本書では上記の内容以外にも沢山の撮影方法が記載されていて「こんな写真撮ってみたい」と思わせる内容が数多くありました。

1番の気付きは事前準備です。

ここまで撮り方の前段階を教えてくれた本はあまりありません。

基礎の前段階でしょうか。

本書の紹介で少しでも皆様の役に立てたのなら嬉しく思います。

本書に興味があれば読んでみてください!

長くなりましたがお付き合い頂きありがとうございました♪

ABOUT ME
クマpapa
会社員兼カメラマンをしています。カメラ歴は15年以上、初心者でもわかる写真やカメラについて情報を発信中です!